フリーランスのための業務委託契約書の書き方ガイド

更新日 / 2025.12.26

フリーランスとして仕事を受けるようになると、避けて通れないのが「業務委託契約書」です。
ただ、初めて目にする条文は専門用語だらけで、「とりあえずサインして大丈夫なのか?」「自分に不利な条件が隠れていないか?」と不安になる人がほとんどだと思います。

この記事では、フリーランス初心者が最低限ここだけは押さえておきたい契約書のポイントを整理しつつ、テンプレートの使い方や、契約だけでは守りきれないリスクをどう保険で補うかまで、順を追って解説します。

読み終わるころには、

  • どんな項目をどう書けばいいのか
  • どこをチェックすれば大きなトラブルを避けられるのか
  • 契約ではカバーできない「ケガ・病気」のリスクをどう考えればいいのか

が、自分なりの言葉で説明できる状態になることを目指します。


業務委託契約書を書く前に知っておきたい基礎知識

このパートでは、「業務委託契約」とは何か、雇用契約と何が違うのか、といった前提となるルールを整理します。
ここを曖昧なまま進めると、「実質は社員扱いなのにフリーランス契約にされていた」「責任の範囲を勘違いしていた」といった、後戻りしづらいトラブルにつながりやすくなります。まずは土台をそろえましょう。

そもそも「業務委託契約」とは何か

「業務委託契約」は、法律上の用語というよりビジネス上の総称です。
民法上は、大きく分けて次のような契約形態に分かれます。

  • 請負契約:成果物の完成が目的(例:LP制作、システム開発、動画1本の納品 など)
  • 準委任契約(委任契約):一定時間や一定期間、業務を行うこと自体が目的(例:月◯時間の業務サポート、カスタマーサクセス対応 など)

現場では、これらをひとまとめにして「業務委託契約」と呼んでいることが多い、というイメージです。

フリーランスとして契約するときは、

  • 「成果物をきちんと納めればよいのか(請負)」
  • 「一定時間、業務を行うことが主なのか(準委任)」

どちらなのかで、責任の持ち方やトラブルの起こりやすいポイントが変わります。契約書の条文を読むときも、「この仕事はどちら寄りなのか?」を意識しておくと理解しやすくなります。

雇用契約との違いと、フリーランスが守られにくいポイント

業務委託契約とよく比較されるのが「雇用契約(正社員・アルバイトなど)」です。両者の大きな違いは、ざっくりいうと以下の通りです。

  • 指揮命令関係
    • 雇用契約:会社が「いつ・どこで・どう働くか」を指示できる
    • 業務委託:基本は成果や役務の提供に対して契約し、「働き方」にはあまり介入しない
  • 法律による保護
    • 雇用契約:労働基準法・最低賃金・残業代・有給休暇などの保護がある
    • 業務委託:原則として「対等な事業者同士の契約」。労働法の保護は基本的に及ばない
  • 社会保険・労災など
    • 雇用契約:会社が社会保険に加入させ、業務中のケガは労災保険の対象になりやすい
    • 業務委託:自分で国保・国民年金に加入し、業務中のケガも原則は自己責任(特別加入などの仕組みはある)

つまりフリーランスは、「法律と会社に守られている」状態から、「自分で自分を守る」状態に変わるということです。
そのため、契約書で何をどう決めておくか、どこまでを自己責任として受け入れるかが、よりシビアな問題になります。

なぜフリーランスほど契約書が重要なのか

フリーランスにとって契約書が重要なのは、単に「形式の問題」ではなく、自分の身と収入を守るための最後の拠り所になるからです。

よくあるトラブルの例を挙げると、次のようなものがあります。

  • 納品したのに「イメージと違う」と言われ続け、追加修正が無限に続く
  • クライアントの都合で突然打ち切られ、着手金も支払われないまま終わる
  • 作った成果物を、別の会社にも勝手に二次利用される
  • 業務中の事故やトラブルで損害が出たとき、どこまで賠償するのかでもめる

こうした問題の多くは、

  • 契約書がそもそも無い
  • あっても中身をよく理解しないままサインしている

ことで起こります。

逆に言えば、

  • 業務範囲
  • 報酬と支払条件
  • 契約の終了条件
  • 責任の範囲

などを事前にきちんと書面で取り決めておけば、後からの認識違いをかなり減らせるということです。

フリーランスは、会社員のように法務部や上司が守ってくれるわけではありません。
だからこそ、「契約書の基本」を理解しておくことが、自分のリスクを下げる第一歩になります。


業務委託契約書に必ず入れておきたい基本項目

このパートでは、業務委託契約書に最低限盛り込んでおきたい定番の項目を整理します。ここが抜けていたり曖昧だったりすると、あとからいくら話し合っても解決しづらいトラブルの原因になりがちです。

どのテンプレートを使うにしても、「この項目は入っているか」「書き方は具体的か?」をチェックする、チェックリスト的な感覚で読んでください。

契約当事者(甲・乙)の情報の書き方

契約書は、「誰と誰が、どんな約束をしているか」を明文化する書類です。
その出発点となるのが、契約当事者(甲・乙)の情報です。

一般的には、次のような情報を記載します。

  • 法人の場合:
    • 会社名(正式名称)
    • 所在地
    • 代表者名
  • 個人事業主の場合:
    • 氏名(フルネーム)
    • 住所
    • 必要に応じて屋号

フリーランスの場合、「屋号だけ」「ニックネームだけ」でやり取りをしているケースもありますが、契約書では本名と住所をしっかり記載しておくことをおすすめします。
後々のトラブル時に、誰と契約していたのか証明できなくなると、それだけで不利になる可能性があるからです。

業務内容と成果物の範囲をどう言語化するか

トラブルの種になりやすいのが、業務内容の書き方です。
「Web制作一式」「コンサルティング業務」など、ざっくりした表現だけだと、あとから範囲の認識ズレが起きやすくなります。

たとえば、Web制作の例なら、

  • トップページ◯点、下層ページ◯ページ
  • ライティングの有無
  • 画像素材は誰が用意するのか
  • WordPressの構築まで含むのか

といった具合に、具体的な作業内容・成果物のイメージを書き出しておきましょう。

文章だけだと長くなりすぎる場合は、別紙に作業内容を一覧化して、
「業務内容は別紙◯◯の通りとする」
とリンクさせる方法もよく使われます。

また、「この契約に含まれないこと」が明確なら、それも一言添えておくと安心です。

  • 例)「※サーバー・ドメインの契約代行は本契約に含まれません」

契約期間・納期・検収方法の決め方

「いつからいつまでの仕事なのか」「いつまでに何を納めるのか」「納品OKの判断はどうするのか」も、事前に決めておきたい重要ポイントです。

典型的な書き方としては、

  • 契約期間:
    • 「◯年◯月◯日から◯年◯月◯日まで」
    • 自動更新する場合は「特段の申し出がない限り、同一条件で◯か月自動更新」といった文言を入れる
  • 納期:
    • 「成果物を◯年◯月◯日までに納品する」
    • あるいは「キックオフから◯営業日以内」など
  • 検収方法:
    • 「納品から◯日以内に検収を行い、問題がない場合は検収完了とする」
    • 「修正の範囲は◯回まで」「軽微な修正は追加料金なし」など

などがあります。

検収期間を決めておかないと、

  • いつまで経っても「まだ確認中です」と言われてしまう
  • 支払サイトがどんどん後ろ倒しになる

といったリスクがあります。
フリーランス側から見ても、検収の締め切りは必ず入れておきたい条文です。

報酬・支払条件・経費負担の整理

お金まわりは、できるだけ数字で明確にしておきましょう。

整理しておきたいのは、主に次の項目です。

  • 報酬額(税別か税込か)
  • 支払日(毎月◯日締め/◯日払い など)
  • 支払方法(銀行振込など)
  • 振込手数料の負担者(甲 or 乙)
  • 交通費・材料費などの経費をどちらが負担するか

たとえば、契約書上は「報酬◯円」としか書かれていないのに、後から「税込だと思っていた/税別だと思っていた」という食い違いが起こると、非常に気まずいです。

また、長期案件の場合は、

  • 着手金の有無
  • 検収前にどこまで支払うか(マイルストーン払い)

も検討対象になります。
報酬まわりの条件は、お互いにとってセンシティブな部分ですが、だからこそ契約書でしっかり明文化しておく方が、後々の関係も健全になりやすいです。

知的財産権・秘密保持の取り決め

制作物やノウハウが絡む案件では、知的財産権と秘密保持の条文も重要です。

よくある論点は、次の2つです。

  • 成果物の著作権を誰が持つか
    • 納品と同時にクライアントへ譲渡するのか
    • 一部の権利(たとえば元データ)はフリーランス側に残すのか
  • 他のクライアント案件での再利用をどこまで認めるか
    • テンプレート化して使い回せるのか
    • 完全オリジナルとして他案件には使わないのか

秘密保持については、

  • クライアントから受け取った情報を第三者に漏らさないこと
  • 契約終了後はデータを削除・返却すること

などを定めるのが一般的です。

IT・広告・クリエイティブ系の仕事では、権利や情報の扱いが後々まで効いてきます。
「なんとなく」でサインせず、一度は自分の言葉に言い換えて理解しておきましょう。

再委託・禁止事項・競業避止の考え方

フリーランスが仕事を進めていると、

  • 忙しくて一部を外注したい
  • 別の専門家に一部をお願いしたい

といった場面が出てくることがあります。
そのときに関係してくるのが「再委託」の条文です。

  • 「クライアントの書面承諾があれば再委託OK」
  • 「再委託は禁止」

など、契約書によって取り扱いが違うので、自分がチームで仕事をする可能性があるかどうかも踏まえて確認しておきましょう。

また、禁止事項や競業避止(コンペティターとの取引制限)についても、フリーランス側にとって不利になりやすい部分です。

たとえば、

  • 「同業他社とは一切仕事をしてはならない」
  • 「契約終了後◯年間、クライアントの顧客と直接取引してはならない」

などが、どこまで妥当かはケースバイケースです。
自分のビジネスの選択肢を狭めすぎないよう、期間や範囲が常識的かどうかをチェックしておきましょう。

契約解除・損害賠償・管轄裁判所などその他の条項

最後に、「何かあったとき」のための条文たちです。

  • 双方が契約を途中で解除できる条件(◯日前までの通知 など)
  • 重大な違反があった場合に、即時解除できる事由
  • 損害賠償の範囲や上限
  • どこの裁判所を専属管轄とするか

などがここに含まれます。

これらの条文は、一見すると「もしもの話」に見えますが、本当に揉めたときに効いてくるのはこの辺りです。
特に、損害賠償については、フリーランス側に過大な責任が課されていないか(売上の何倍もの賠償義務になっていないか)を確認しておくと安心です。


テンプレートをベースに「自分の案件用」に書き換える手順

ここからは、実際に契約書を用意するときの手順を解説します。
世の中には無料テンプレートがたくさんありますが、そのまま使うだけでは自分の案件にフィットしません。

このパートでは、

  1. テンプレの選び方
  2. 自分の案件情報の整理の仕方
  3. 条文を調整するときの考え方

という流れで、実務的なステップを整理します。

信頼できる雛形・テンプレートの選び方

テンプレを探すときは、以下のような観点で選ぶと失敗しにくくなります。

  • 運営元が明確(行政・士業・大手サービスなど)
  • 更新日が新しめ(古すぎるものは法改正に対応していない可能性がある)
  • 業務委託向けの内容になっている(労働契約用ではない)
  • 「請負」「準委任」など、契約の性質が自分の案件と近い

可能であれば、

  • フリーランス向けの解説記事+テンプレ
  • 法律事務所が公開している雛形

など、「なぜこの条文が必要なのか」まで説明しているものを選ぶと理解が進みます。

自分の案件内容を日本語で整理してから条文に落とす

いきなり条文を書き換えようとするより、まずは自分の案件をふつうの日本語で整理するのがおすすめです。

たとえば、メモ帳やノートに次のようなことを書き出します。

  • どんな成果物/サービスを提供するのか
  • いつまでに、どこまでやるのか
  • いくら、どのタイミングで支払ってほしいか
  • どの程度の修正までを想定しているか
  • 途中で打ち切りになったらどうしたいか

これを整理したうえで、テンプレの該当箇所と見比べながら、

  • 自分の案件の条件を反映させる
  • 必要ない条文は削る
  • 足りないルールは追記する

といった調整をしていきます。

ポイントは、「条文の言い回し」よりも「何をルールとして決めたいのか」から考えることです。

トラブル場面を想定して条文を調整する

契約書は、「普段うまくいっているとき」ではなく、「うまくいかなくなったとき」に効いてくるものです。

そのため、一度は次のようなシーンをイメージしてみましょう。

  • クライアントが途中でやめたいと言ってきたら?
  • 自分が体調不良などで納期に遅れそうになったら?
  • 想定外の追加依頼が来たら?
  • 作業中に事故やトラブルが起きて損害が発生したら?

それぞれの場面で、

  • 誰がどこまで責任を負うのか
  • 報酬はどうなるのか
  • 契約を続けるのか、終わらせるのか

を、契約書にどう反映しておくべきかを逆算して考えます。

こうやって「想定される最悪パターン」から条文を見直しておくと、後から「こんなはずじゃなかった」をだいぶ減らせます。

紙か電子か?締結方法と実務フローを決める

最後に、どうやって契約書を締結するかも実務上のポイントです。

代表的なパターンは次の通りです。

  • 紙で2通印刷し、双方が署名・押印して1通ずつ保管する
  • PDFにして、電子署名サービス(電子契約)で締結する

最近は電子契約を使うケースも増えています。
電子契約の場合は、

  • 双方がサービスのアカウントを持てるか
  • 印紙税の扱い(多くの場合、電子契約は印紙不要)

などもあわせて検討しましょう。

いずれにせよ、

  • 「誰が」「どのタイミングで」「どの方法で」契約締結の作業を行うか

を事前にすり合わせておくと、契約締結までの流れがスムーズになります。


フリーランスが特にチェックすべきリスクポイント

このパートでは、フリーランスの立場から見てとくに気を付けたいポイントをピックアップします。
全部を完璧にコントロールすることはできませんが、最低限ここを押さえておくだけでも、リスクの桁が1つ変わります。

報酬未払い・一方的な減額を防ぐためのチェック

報酬トラブルを防ぐには、次のような点を契約書で確認しておきましょう。

  • 報酬額が具体的な数字で書かれているか(◯円[税別/税込])
  • 支払サイト(いつ支払われるか)が明記されているか
  • 検収完了のタイミングと支払の関係がわかるか
  • クライアント都合でキャンセルになった場合の扱い(着手金・中途解約時の精算方法)が決まっているか

「仕事はしたけど、お金が入ってこない」という事態は、フリーランスにとって致命的です。
多少交渉が必要になっても、ここは妥協しすぎないことをおすすめします。

追加作業・仕様変更で揉めないための工夫

案件が進むうちに、

  • 「ここもついでにお願いしたい」
  • 「やっぱり仕様を変えたい」

といった話は、ほぼ確実に出てきます。

これ自体はよくあることですが、契約書で何も決めていないと、

  • フリーランス側は「追加料金をもらいたい」
  • クライアント側は「契約の範囲内だと思っている」

というすれ違いが起こりがちです。

対策としては、

  • 「当初合意した仕様から大きく変更する場合は、別途見積もり・契約を行う」
  • 「修正対応は◯回までを想定し、それ以上は別途料金」

といったルールを、契約書またはメールなどの書面で確認しておくのが有効です。

偽装請負になりそうな条件に要注意

業務委託契約でよく問題になるのが、「実質的には社員と同じ扱いなのに、契約だけ業務委託にしている状態(偽装請負)」です。

たとえば、

  • 出社時間・退社時間を細かく指定される
  • 仕事のやり方まで細かく指示される
  • 会社の社員と同じ勤怠管理を求められる

といった条件が重なってくると、雇用と見なされるリスクが出てきます。

フリーランス側から見ても、

  • 労働法の保護は受けられないのに
  • 実態はほぼ社員と変わらない働き方

という、中途半端でリスクの高い状況になりかねません。

契約書を読むときは、

  • 自分の裁量で働ける範囲がどれくらいあるのか
  • 勤務時間や場所の指定がどこまで書かれているか

も意識してチェックしておきましょう。

事故・物損が起きたときの責任範囲をどう見るか

現場仕事や外出の多い仕事では、

  • 業務中のケガ
  • 相手のものを壊してしまう物損

といったリスクも無視できません。

契約書上では、

  • どこまでをフリーランス側の責任とするのか
  • クライアントの指示や環境に原因がある場合はどう扱うのか
  • 損害賠償の上限をどう設定するか

といった観点で条文を見る必要があります。

ただし、契約だけで全てのリスクを消すことはできません。
とくに「ケガ」や「長期の休業」による収入減は、契約書だけでカバーしきれない部分が大きいため、後述の「保険」の話とあわせて考えることが大切です。


契約だけでは守りきれないリスクと、労災・保険の考え方

このパートでは、契約書ではカバーしきれない「ケガ・病気・長期休業」のリスクについて整理します。
フリーランスは、会社員と違って「会社の労災」「傷病手当金」といった仕組みに守られにくい立場です。契約と同じくらい、保険の考え方もセットで押さえておく必要があります。

契約書でカバーできるリスク/カバーしきれないリスク

ざっくり整理すると、契約書が得意なのは「お金と責任のルールを決めること」です。

  • 誰が
  • 何をして
  • いくらもらい
  • 何かあったときにどこまで責任を負うか

を取り決めるのが契約の役割です。

一方で、次のような事態までは契約書だけで救いきれません。

  • 現場での事故やケガで、長期間仕事ができなくなる
  • 入院や療養が必要で、収入が大きく減る
  • 自分のミスではなくても巻き込まれて被害を受ける

こうした「生活そのものに影響するリスク」は、契約上の条文とは別に、保険で備える発想が必要になります。

業務中のケガ・病気に備える選択肢(労災・民間保険など)

フリーランスが業務中のケガ・病気に備える代表的な手段として、以下のようなものがあります。

  • 労災保険の特別加入
    • 本来、労災保険は「労働者」のための制度ですが、一定の条件を満たす一人親方・フリーランスなどは「特別加入」という形で加入できる場合があります。
    • 業務や通勤に関連したケガ・病気について、医療費や休業補償などの給付を受けられる可能性があります。
  • 民間の傷害保険・所得補償保険など
    • 業務中・日常生活中のケガに備えるもの
    • 病気やケガで働けない期間の収入を一部カバーするもの

それぞれ、対象となる事故・病気の範囲や、補償内容・保険料が異なります。
どの選択肢が自分にとって現実的かを考えるうえでも、自分が普段どんな現場で、どんなリスクを負って仕事をしているのかを整理しておくことが大切です。

「契約書+保険」でリスクを分散するという発想

フリーランスにとって理想的なのは、

  • 契約書で「お金・責任のルール」を整理し
  • 保険で「生活・健康のリスク」をカバーする

という、二段構えのリスク管理です。

イメージとしては、次のような役割分担になります。

  • 契約書:
    • 「支払ってもらえない」「無制限に責任を負わされる」といったトラブルを防ぐ
  • 保険:
    • それでも起きてしまった事故・ケガ・病気で、生活が立ち行かなくなるリスクを和らげる

どちらか一方だけでは穴が空きやすくなります。
「まず契約書で土台を整え、そのうえで保険で穴を埋める」という発想で、自分なりのバランスを考えてみてください。


サインする前に確認したい最終チェックリスト

最後に、実際に契約書へサインする前に確認したいポイントを簡単なチェックリストとしてまとめます。
すべてに完璧に◯をつける必要はありませんが、「ここは気になっているのに何も書いていない」という状態だけは避けましょう。

業務内容・報酬・責任範囲・解除条件のチェックリスト

サイン前に、最低限つぎの点を確認してみてください。

  • 業務内容
    • どこまでが契約の範囲か具体的に書かれているか
    • 自分が想定していない作業が含まれていないか
  • 報酬・支払条件
    • 金額・税込/税別・支払サイトが明記されているか
    • 追加作業が発生したときの扱いが決まっているか
  • 期間・解除条件
    • 契約期間と更新方法が明確か
    • 途中でやめたいときの手続きや精算方法が定められているか
  • 責任範囲・損害賠償
    • 自分の責任範囲が常識的な範囲に収まっているか
    • 損害賠償の上限が過度に高く設定されていないか
  • 権利・秘密保持
    • 成果物の権利関係がはっきりしているか
    • 秘密保持や情報の取り扱いに無理な条件がないか

気になる点があれば、そのままにせず、一度相手に質問してみるのがおすすめです。
本当に信頼できるクライアントであれば、きちんと説明してくれるはずですし、そのやり取り自体が今後の関係性の試金石にもなります。

不安が残るときの選択肢(交渉する/保険で補う/契約を見送る)

それでも、どうしても不安が拭えないケースもあります。
そんなときに取りうる選択肢として、次の3つを覚えておいてください。

  1. 契約内容を交渉する
    • 条文の一部を書き換えてもらえないか相談する
    • 条件を調整するかわりに、納期や成果物の範囲を見直す
  2. 保険など別の手段でリスクを補う
    • 契約では責任範囲をある程度受け入れつつ、保険で最悪の事態に備える
    • 業務内容に合わせて、労災特別加入や傷害保険などを検討する
  3. 今回は契約自体を見送る
    • 条件がどうしても折り合わない場合、「やらない」という選択肢も持っておく
    • 一見チャンスに見える案件でも、リスクが大きすぎれば長期的にはマイナスになる

フリーランスとして長くやっていくためには、目先の売上だけでなく、自分の健康と生活も含めた「トータルのリスク」を見て意思決定することが欠かせません。

この記事で整理した視点をベースに、

  • 契約書の中身を自分の言葉で理解し
  • 必要に応じて保険も組み合わせながら

「この条件なら安心して仕事に集中できる」と言えるラインを、自分なりに決めていってください。

監修者からメッセージ

一人親方労災保険組合顧問 覺正 寛治

一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ

一人親方に安心安全を提供したい

静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。

厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。

一人親方労災保険組合の労災保険特別加入手続き対象地域

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