労災保険のアフターケアとは?対象となる傷病や制度の使用手順を解説

一人親方労災保険

公開日 / 2023.7.19

労災保険は、労災事故で負った傷病に対する治療費などを補償する保険です。 しかし、労災事故では、事故で直接負った傷病だけではなく、症状固定後に再発・新たに発症した傷病によって治療費などが発生する恐れがあります。 

再発や新たな傷病の発症は長期間の治療になることも多く、金銭的負担も大きくなるでしょう。 万が一傷病の再発や新たな傷病が発生した際に使用できるのが、労災保険の制度の1つであるアフターケアです。 

本記事では、労災保険のアフターケアとは何か、対象となる傷病や使用手順について解説します。 

労災保険のアフターケアとは 

アフターケアとは、労災事故によって負った傷病の症状が固定された後、傷病の再発や発症を予防するためにさまざまな医療処置などを無料で受けられる制度です。 労災事故によっては、完治が難しい傷病を患う可能性があります。 

完治しない傷病は、症状が固定された後も再発や後遺障害に伴う新たな病気の発症などのリスクがあるでしょう。 

労災保険に加入していれば、アフターケアによって、事故で直接負った傷病だけではなく、万が一傷病が再発・発症した場合でも補償を受けられます。 

労災保険の特別加入については、以下の記事で詳しく解説しています。

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労災保険のアフターケアが使用できる傷病 

アフターケアは、すべての傷病で使用できるわけではありません。 20種類の特定の傷病のみが対象です。対象となる傷病と要件は下記のとおりです。 

労災保険のアフターケアが使用できる傷病

労災保険のアフターケアを使用する手順 

労災保険のアフターケアを使用する手順

労災保険のアフターケアは、通常の補償と同様に申請などの手続きが必要です。 ここでは、使用する際の手順について詳しく解説します。 

①怪我や傷病の治療 

アフターケアを使用するには、傷病の完全な回復もしくは症状が固定しており、それ以上改善が期待できない状態である必要があります。 そのため、まずは労災保険の障害補償や療養補償などを受けながら、症状が回復・固定するまで治療を続けましょう。 

②健康管理手帳の申請 

症状が回復・固定したあとは、申請することでアフターケアが使用可能です。 「健康管理手帳交付申請書」を作成し、所属事業所を管轄する都道府県労働局長に提出しましょう。 

申請には期限があり、期限がない傷病以外は症状が回復・固定した日の翌日から起算して2年、もしくは3年以内に申請する必要があります。 申請が遅れないよう、事前に申請書の用意などをしておきましょう。 

③健康管理手帳の交付 

労働局の審査後、健康管理手帳が交付されます。 

なお、審査の結果によっては不交付となる場合があるでしょう。 

不交付の場合は、3か月以内であれば厚生労働大臣に対して審査請求が可能です。 

④アフターケアを受診 

健康管理手帳交付後は、アフターケアを受けられる医療機関で健康管理手帳を提示することで受診できます。  健康管理手帳がないと受診できないため、忘れないように注意してください。 

アフターケアの健康管理手帳の更新 

アフターケアの健康管理手帳には有効期限があるため、傷病ごとに決められた期間で更新する必要があります。 新規での交付か更新かによっても有効期限が違うため、事前に確認が必要です。 また、傷病によっては更新できないものもあるので注意してください。 

有効期間間近になると有効期間満了のお知らせが届きます。満了1か月前までに、所属事業所を管轄する都道府県労働局長に、「健康管理手帳更新・再交付申請書」を提出します。 

一部の傷病については、医療機関の主治医による診断書が必要になるため、事前に確認して必要であれば医師に相談してください。 

なお、更新時にも審査があるため、場合によっては不交付となる場合もあります。 不交付の場合、申請時と同様に3か月以内であれば厚生労働大臣に対して審査請求が可能です。 

アフターケアにおける通院費の支給 

傷病の治療は、治療費だけではなく交通費なども大きな出費です。労災保険のアフターケアでは、経済的負担軽減のため条件を満たす場合に通院費が支給されます。 

通院費支給の条件は、下記のとおりです。 

  • ①自宅または勤務先から片道2km以上の同一市町村内にあるアフターケアを受けられる医療機関へ鉄道やバス、自家用車などを使用して通院するとき 
  • ②片道2km未満の場合でも、傷病の状態から鉄道やバス、自家用車などを使用しなければ通院できないとき 
  • ③同一市町村内にアフターケアを受けられる医療機関がない、または隣接する市町村の医療機関のほうが通院しやすいため、隣接する市町村の医療機関へ通院するとき 
  • ④同一市町村および隣接する市町村にアフターケアを受けられる医療機関がないため、そのほかの最寄りのアフターケアを受けられる医療機関へ通院するとき 

通院費の支給には、申請が必要です。 「アフターケア通院費支給申請書」と「領収書などの通院費の額を証明する書類」を、所属事業所を管轄する都道府県労働局長に提出しましょう。 

労災保険にはアフターケアを含むさまざまな制度・補償がある 

労災事故による傷病は、 長期間の治療になる可能性もあり、金銭的負担は少なくありません。 そんなときは労災保険のアフターケアを使用することで、リスクを回避することができるでしょう。 

労災保険には、今回ご紹介したアフターケア以外にもさまざまな制度・補償があります。 労災保険に加入して、万が一の事故などに備えましょう。

監修者からメッセージ

一人親方労災保険組合 理事 古口仁

一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ

一人親方に安心安全を提供したい

静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。

厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。

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