一人親方が仕事中に怪我をした場合、労災保険に入っていると、さまざまな補償が受けられます。いざというときを考えて、労災保険への加入を検討している方も、多いのではないでしょうか。

しかし、具体的な補償内容や対象となる事象・給付額などがわからないと、なかなか決断できないものです。そこで今回は、一人親方が労災に加入した場合の補償内容や、給付の種類・金額について詳しく解説します。

一人親方労災保険に安く入るには？
組合費での比較がおすすめ

一人親の労災保険の特別加入は国が用意した制度であるため、どこの団体からご加入いただいても労災保険料も補償内容も変わりません。そのため比較すべきポイントは団体ごとに違う組合費。

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一人親方労災保険の補償内容は全国一律

労災保険は、仕事中や通勤中に起こった事象を原因とした怪我・病気・障害・死亡に対し、何らかの補償をおこなう制度のことです。正式名称は労働災害補償保険といいます。国が制定した制度なので、どの団体に加入しても補償内容は全国一律で変わりません。

ただし、どの団体に加入するかによって、入会費や組合費・給付基礎日額の種類が違ってきます。労災保険への加入を検討するときは、団体ごとの特色を比較検討することが大切です。

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一人親方労災保険の補償内容：対象となる災害

労災保険の補償内容は全国一律ではあるものの、どのような事象が対象となるのか、気になる方もいることでしょう。補償内容の対象となる災害について、業務災害と通勤災害に分けて解説します。

業務災害

業務災害とは、簡単にいうと仕事中に起こってしまった災害のことです。業務災害で負った怪我・病気・障害や、死亡といった事象が業務災害と認定され、労災保険の補償対象になります。

ただし、仕事中であればどのような事象でも補償対象になるわけではなく、たとえば建設業の場合は、次のような条件が課せられます。

• 請け負った仕事の内容として必要だと認められる行為で起こった災害
• 請け負った仕事で明らかに必要な作業を自宅で行った際に起こった災害
• 請け負った工事に必要な機械や製品を運搬する際に起こった災害
• 突発事故（台風・火災など）により予定外に緊急の出勤の際に起こった災害

つまり、仕事と直接的に関わる作業をしている中で起こった災害が、補償内容の対象です。仕事中の災害がすべて対象になるわけではありませんので、間違えないようにしてください。

一人親方労災保険組合顧問

覺正 寛治

 

 

ある団地の外壁改修工事現場において、足場組立用の部材をトラックに積み込む作業を行っている際に部材に挟まれ右手薬指を負傷した業務災害がありました。この事例では、ご本人は病院で治療を行い、また、痛みや腫れがしばらくの間続いたことから休業することになりました。

そこで、当組合では、ご本人からお聞きした事故の状況を「労災事故報告書」に取りまとめ、治療費である「療養補償給付」と休業手当として「休業補償給付」を所轄の労働基準監督署に申請し、無事に給付が行われました。

当初、労働基準監督署の担当官からは負傷された方は一人親方ではなく雇用関係にある「労働者」ではないかとの疑問を持たれましたが、当組合の担当者が再三にわたり事実関係を報告書にまとめて粘り強く説得したところ、担当官の理解を得られ無事に一人親方として労災認定されました。
当組合の担当者は、それぞれ労災関係法令や行政の通達にも精通したプロであり、一人親方の立場に立って迅速で丁寧な対応をしております。

通勤災害

通勤災害とは、自宅から勤務先まで通勤ルート上で起こった災害のことです。通勤災害として補償されるためには、通勤に合理的なルートを通っていたことを証明しなければなりません。

たとえば、現場までの通勤途中に何かしらの理由でルートを外れたとします。通勤に使用している車の給油のためにルートを外れた場合は、合理的と判断されるので補償内容の対象です。

しかし、帰宅途中で遊びに行くためにルートを外れて怪我をした場合、非日常的・不必要な行動と判断され、通勤災害とは認められません。

通勤災害の対象は、ルートの逸脱・中断行為が日常的かどうか、仕事と関係しているかで判断されます。通勤災害補償は、加入していると万が一のときに安心ですが、こうした基準があることを理解しておきましょう。

一般社団法人一人親方労災保険組合　代表理事

古口　仁

 

 

通勤災害として認められるためには、就業に関して合理的な経路及び方法で移動していることが必要であり、自宅から就業場所である現場に向かう途上での事故等が典型例となっています。

移動方法として電車を選択していれば、駅の階段での事故等も補償の対象です。また帰宅途中に日用品の購入のために、帰宅経路にあるスーパーを訪れたような場合も、日常生活上必要な行為であるため、通勤における逸脱とはみなされず、通勤の経路に戻った後は補償の対象となります。ただし、通勤時にスーパー等に立ち寄ったような場合には、そのスーパー等で起きた事故は通勤災害の補償対象とならないことに注意してください。

他にも選挙権の行使や病院での診察等も日常生活上必要な行為とされ、通勤における逸脱とはみなされません。

また通勤途中にある公園のベンチで軽い飲食を行う場合は、飲食中の事故等を除き、通勤災害の補償対象となりますが、業務に関係のないレストランや居酒屋に移動し、飲食するような場合は、飲食中を含めその後は通勤とはされず、補償の対象外となります。

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一人親方労災保険の補償内容：給付の種類

一人親方が労災保険への加入を考えるとき、どのような補償があるのかも気になるところです。労災保険の給付の種類を知っておくと、より自分に合った保険に加入できます。一人親方が労災保険で受けられる補償内容・給付の種類をご紹介しましょう。

療養補償

療養補償は、仕事中・通勤中に負った疾病に対し、治療を受けるための補償です。特別な支給はありませんが、労災病院・労災指定病院等での治療は無料、それ以外の病院の治療費も申請すれば支給されます。

休業補償

休業補償は、仕事中や通勤中に何かしらの怪我・疾病を負い4日以上働けない場合に、給付基礎日額の6割に当たる給付金が支給される補償です。

さらに、1日につき給付基礎日額の2割に当たる休業特別支給金が上乗せで支給されます。合計8割の補償で、働けない期間の生活を経済的に支援してくれるのです。

傷病補償年金

疾病補償年金は、仕事中・通勤中に負った怪我や病気が1年半以上治らなかったときに給付金が支給される補償です。怪我や病気の状態は第1級〜第3級に振り分けられ、該当する等級と照らし合わせた金額が、傷病特別支給金として給付されます。

障害補償年金

障害補償年金は、仕事中・通勤中の怪我や病気で障害が残ったときに年金が支給される補償です。障害は、状態に応じて第1級から第7級までに振り分けられ、等級に応じた給付金が支給されます。

障害補償一時金

障害一時補償金は、障害補償年金のうち一時金として支給される給付金です。等級分けされる障害のうち、第8級〜第14級に該当する方を対象にしており、給付基礎日額の56〜503日分のいずれかが給付されます。

介護補償

介護補償は、障害補償年金もしくは傷病補償年金を受給しており、一定の障害を持っていて介護を必要としている方が対象です。介護費用を支援するための補償で、常時介護を必要とする者と、随時介護を必要とする者に分かれています。

遺族補償年金

遺族補償年金は、仕事中や通勤中になくなった方の遺族を対象にした補償です。遺族の人数によって給付基礎日額が異なり、それぞれに応じた金額が給付されます。一律300万円の遺族特別支給金も支給されますが、これは遺族に人数に関係しません。

遺族補償一時金

遺族補償一時金は、次の条件を満たしている方を対象にした補償です。

1. 遺族（補償）年金の受給資格がある遺族がいない
2. 遺族（補償）年金を受けている人が失権し、他に受給資格を持つ人がおらず、すでに支給された金額の合計が給付基礎日額1000日未満の場合

条件が満たされないと支給されないので、よく確認しましょう。

葬祭料

葬祭料は、労災で亡くなった方の葬儀費用を支給する補償です。31万5千円に給付基礎日額30日分を加算した金額と、給付基礎日額60日分の金額を比較して高い方が支給されます。

一人親方労災保険の給付額一例

一人親方の労災保険について、ここまでくわしく解説してきましたが、具体的な例がないとピンとこない方もいらっしゃることでしょう。そこで、一人親方・妻・子2人の4人家族で、給付基礎日額10,000円で特別加入労災に加入した場合を想定し、給付額の一例をご紹介します。

具体的な金額を見ると、給付基礎日額を考えるうえでも参考になることでしょう。詳細な部分もよく検討して、自分に合った加入プランを探してください。

一般社団法人一人親方労災保険組合　代表理事

古口　仁

 

 

一人親方の給付基礎日額は、一般の労働者と異なり、自分で選択できることが大きな特徴です。そのため、保険料を抑えたい場合には低めの給付基礎日額を選択し、補償を厚くしたい場合には高い給付基礎日額を選択する等の自身の状況に合わせた選択をすることが可能となっています。

どの給付基礎日額を選択したとしても、労災事故による怪我や病気であれば、病院での治療費は掛からないことに違いはありませんが、休業補償や障害補償年金等は、給付基礎日額を基礎として給付額が決定されます。そのため万が一に備えて、自身の生計に掛かる費用を考えた上での給付基礎日額の選択が重要です。

選択した給付基礎日額は、後に変更することも可能ですが、年度の途中においての変更はできないため、加入時に良く考えた上で選択を行いましょう。

充実した補償内容の一人親方労災保険に加入しよう

労災保険は、補償内容が充実した、国の制度です。どの団体に加入しても補償内容は全国一律で変わりません。

ただし、実際の給付金額は、給付基礎日額によって異なります。給付基礎日額が高ければ補償される金額も充実しますが、その分保険料が高くなるため、バランスを考えて自分に合った給付基礎日額を選びましょう。

事前に補償内容を確認し、無理のない範囲で労災保険に加入できれば、万が一のときにも慌てません。モデルケースを参考にしつつ、充実した補償内容の一人親方労災保険へ加入しましょう。

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