ウーバーイーツは労災保険に特別加入できる! 加入手順や保険料は?
公開日 / 2024.3.26
ウーバーイーツの配達員は自転車やバイクを運転して仕事をするため、事故やケガのリスクを常に抱えています。
そこで気になるのが労災保険です。ウーバーイーツの配達員はどうしたら労災保険に加入できるのでしょうか。
こちらの記事ではウーバーイーツの配達員の方が労災保険に入る方法や、労災保険の保険料の計算方法について詳しく紹介しています。
すでにウーバーイーツで配達をしている方はもちろん、ウーバーイーツでの副業に興味のある方もぜひ参考にしてください。
ウーバーイーツの配達員は労災保険に特別加入できる
ウーバーイーツの配達員は労災保険に特別加入ができます。
労災保険は、仕事中に受けたケガや病気に対する補償をおこなう保険であり、社員を1人でも雇用している会社には加入が義務付けられています。
労災保険の対象者はあくまでも社員であるため、会社役員やフリーランス、個人事業主は労災保険の対象外です。
そのため、個人事業主であるウーバーイーツの配達員が、仕事中にケガを負ったり病気になったりしてもなんら補償はされません。
しかし、フリーランスの中でもケガや病気のリスクが高い業務をおこなう場合は、自己負担で労災保険への特別加入ができます。
ウーバーイーツの配達員も、原付や自転車を使って業務をおこなう性質上、事故のリスクが高いため労災保険への特別加入が認められているのです。
なお、フードデリバリーの配達員としての働き方や、労災保険の特別加入と通常加入の違いについては下記の記事で詳しく解説しています。
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ウーバーイーツ配達員はどんな給付が受けられる? 労災保険給付の種類ごとに紹介
実際にウーバーイーツの配達員が労災保険へ加入した場合に受けられる給付について見ていきましょう。
具体的な給付は以下の7つが挙げられます。
療養給付
療養給付とは、ケガや病気を治療するときに受けられる給付です。ウーバーイーツの配達員の場合、配達の運転中にケガをした場合などに受けられます。
労災病院や保険指定医療機関などで治療を受けた場合は治療費が無料になり、それ以外で治療した場合も治療額相当分の還付がされます。
休業給付
休業給付とは、ケガや病気の治療のために、連続して仕事を休んだ際に受けられる給付です。
休業4日目以降1日につき給付基礎日額の80%(休業補償60%、休業補償特別支給金20%)の金額が給付されます。
障害給付
障害給付とは、ケガや病気が治らずに障害が残ってしまった場合に受けられる給付です。
残った傷害の程度と給付基礎日額に応じて、一時金や年金が給付されます。
遺族給付
遺族給付とは、業務が要因で死亡した場合に受けられる給付です。
遺族の数と給付基礎日額に応じて、一時金や年金が給付されます。
葬祭給付
葬祭給付とは、業務が要因で死亡し、お葬式をする場合に受けられる給付です。
給付基礎日額の30日分+315,000円または、給付基礎日額の60日分のうち、高いほうが給付されます。
傷病年金
傷病年金とは、ケガや病気の療養が始まってから1年6か月が経過しても症状の治癒や、固定がしない場合に受けられる年金型の給付です。
症状の程度と給付基礎日額によって、年金が給付されます。
介護給付
介護給付とは、障害年金や傷病年金をもらっていて、介護を受けている場合に受けられる給付です。
給付基礎日額は関係なく、介護の状況に応じ固定額の一時金が給付されます。
出典:厚生労働省「労災保険給付等一覧」
ウーバーイーツの配達員が労災保険に特別加入する2つのメリット
ウーバーイーツの配達は、貨物の運送業に該当するため一人親方労災保険に加入できます。
ウーバーイーツの配達員が一人親方労災保険に入るメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 副業でウーバーイーツをしている場合でも補償が受けられる
- 団体ごとの優待や特典制度が受けられる
副業でウーバーイーツをしている場合でも補償が受けられる
第一のメリットが、 副業でウーバーイーツをしている場合でも補償が受けられる点です。
ウーバーイーツの配達をする方の中には、別に本業を持ちながら副業でウーバーイーツの配達員をしている方もいることでしょう。
しかし、本業の会社が労災保険に加入してくれていても、副業でおこなっているウーバーイーツの配達で起こった労災については一切補償されませんので、副業に対する労災保険にも特別加入する必要があります。
この場合、労災保険の給付の基礎となる給付基礎日額は、本業と副業の給付基礎日額を合算した金額となるため、保険料が無駄になりません。
たとえば、A社(月給30万円)とB社(月給15万円)の2社で就業している場合は、下記のようになります。
■計算方法
A社 30万円×3か月÷90日=10,000円
B社 15万円×3か月÷90日=5,000円
10,000円+5,000円=15,000円(給付基礎日額)
副業で労災保険に特別加入している場合、本業で労災が発生したとしてもより多くの給付を受けられます。
団体ごとの優待や特典制度が受けられる
第二のメリットが、団体ごとの優待や特典制度が受けられる点です。
労災保険の加入団体によっては、優待や特典が受けられる場合があります。
たとえばレジャー施設のクーポンが使えたり、ファミリーレストランなどの飲食店でサービスを受けられたりします。
活用すれば、収めている保険料や組合費以上のサービスを受けることも可能なため、大きな節約もできるでしょう。
しかし、労災保険はあくまでも労災が発生したときの保険であるため、優待は本質的な部分ではありません。
優待はあればラッキーくらいに考えて、加入団体は慎重に選ぶべきです。
労災保険に特別加入をする2通りの方法
次にウーバーイーツの配達員が労災保険に特別加入する方法を紹介します。
具体的な方法は以下の2つです。
- 特別加入団体を経由して申し込む
- 自分で団体を作って申し込む
特別加入団体を経由して申し込む
特別加入団体を通じて労災保険に加入するのが一般的な方法です。
形式上は団体を会社、加入している会員を社員とみなして給付がおこなわれるため、個人が労災保険へ特別加入する場合は必ず団体を通じて申し込む必要があります。
また、加入には労災保険料の他に、入会費や組合費がかかります。
保険料は国が決めたものなので、団体によって変わることはありませんが、入会費や組合費は団体によって違うため、よく比較して決めましょう。
自分で団体を作って申し込む
他にも自分で団体を作って労災保険に特別加入する方法もあります。
特別加入申請を労働基準監督署長に提出して、監督署長経由で都道府県の労働局長の承認を受ける必要があるため、簡単なことではありません。
特別な事情がない限りは、既存の特別加入団体を通じて労災保険に加入したほうが良いでしょう。
ウーバーイーツ配達員の労災保険料はいくら? 計算方法を解説
ウーバーイーツの配達員の労災保険料は事前に設定した「給付基礎日額」によって決まります。
給付基礎日額が高いほど給付額も上がりますが、その分保険料も上がるので注意しましょう。
給付基礎日額は3,500円から25,000円の間で16段階あり、自分の収入に応じた金額を給付基礎日額として設定できます。
ウーバーイーツ配達員の場合、保険料の計算式は以下の通りです。
■給付基礎日額(円) × 365(日) ×12/1000
給付基礎日額3,500円の場合、上記の計算式に当てはめると年間の保険料は15,324円となります。
また、給付基礎日額25,000円の場合、 年間の保険料は109,500円です。
出典:厚生労働省「特別加入保険料率表」
このように、給付基礎日額を上げるとその分保険料も上がってしまうため、どうしても低い金額を選んでしまいがちです。
しかし、金額が低いという理由のみで給付基礎日額を決めるのはおすすめできません。
給付基礎日額にこう決めるべきという画一的な決め方はありませんが、実際に仕事を休業したらどれくらいの損失が出るかや、無理なく保険料を払えるのかを考えて給付基礎日額を決めましょう。
ウーバーイーツの配達員は労災保険に入った方がいい! 加入しない3つのリスク
「ウーバーイーツの配達員に労災保険はいらない」と言われることもありますが、結論からいえば、ウーバーイーツの配達員にこそ労災保険は必要です。
全額自己負担であるため金銭的な負担が問題視されているものの、フードデリバリー配達員が労災保険に未加入の状態では、以下のようなさまざまなリスクを抱えることになります。
これらのリスクを詳しく解説していきましょう。
①事故に遭うリスク
自転車が事故に遭うリスクはそう低くありません。国内には約7,000万台の自転車があります。それに対し自転車事故の件数は年間で約1万6,000件です。
7,000万台のすべてが実際に道路を走っているわけではなく、たまのサイクリングに使う自転車やコレクション目的で保管されている自転車なども含まれています。
1万6,000件の事故は決して少ない件数ではないことがわかるでしょう。
出典:国土交通省「第1回自転車の活用推進に向けた有識者会議 自転車の活用に関する現状について」
出典:兵庫県警察「自転車が関係する交通事故発生状況」
②体調を崩すリスク
ウーバーイーツの配達員の仕事をしていれば体調を崩すリスクもあるでしょう。
ウーバーイーツは暑い日でも寒い日でも、自転車やバイクに乗って利用者にいち早く料理を届ける必要があります。そのためウーバーイーツの仕事は、体力がものを言う仕事です。
体力勝負の仕事は体調を崩しやすく、無理をして仕事をするとケガのリスクも高まります。出来高制のウーバーイーツの配達員は、療養中の収入は当然ありません。体調を崩すリスクは、高いといえるでしょう。
ただし、業務中の熱中症に関しては補償対象になり得ますが、コロナウィルスやインフルエンザや風邪の場合は感染経路の特定が難しく業務が原因との証明が困難なため、労災認定される可能性は限りなく低いといえます。
③事件に巻き込まれるリスク
稀にですが、事件に巻き込まれることもあります。
ウーバーイーツの配達員は不特定多数の人と対面する仕事です。配達員側がウーバーイーツ利用者を選ぶことはできません。
そのため、利用者とトラブルになった末に事件に巻き込まれることも考えられるでしょう。
注文時に身元確認や身分証明も必要はなく、さまざまな人がウーバーイーツを利用します。状況によっては一時的に利用者と二人きりになる可能性もあるので、注意が必要です。
※相手方がいる労災事故の場合、相手からの補償と労災保険の補償は調整関係にあるため、同一項目について二重で受け取ることはできません。
労災保険を活用してウーバーイーツ配達員はもしものときに備えよう
ウーバーイーツの配達員をしている方は、誰もが労災のリスクに晒されています。
労災保険に加入していれば、もしものときに補償してもらえるため金銭的にも精神的にも大きな支えになるのです。
もしも、まだ労災保険に入っていないウーバーイーツ配達員の方がいれば、今すぐにでも労災保険の特別加入をしましょう。
監修者からメッセージ
一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ
一人親方に安心安全を提供したい
静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。
厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。
一人親方労災保険組合の労災保険特別加入手続き対象地域
北海道 | 北海道、青森 |
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