フードデリバリー配達員は任意保険への加入は必須?出前館は要注意
更新日 / 2024.12.09
任意保険とは、自賠責保険でカバーできない範囲を補うために任意で加入する自動車保険です。
出前館などのフードデリバリー業務では、任意保険への加入が必須となるケースがあります。
この記事ではフードデリバリー業務に必要な任意保険の種類や選び方について解説します。後半で紹介する、労災保険の「特別加入制度」もぜひ合わせて参考にしてください。
フードデリバリーで任意保険が必要な理由
フードデリバリーで任意保険が必要な理由は、配達車両の交通事故に備えるためです。
たとえば、店舗へ商品を受け取りに行くときや配達先へ向かう途中、配達後の帰路など、フードデリバリーではほぼすべての業務工程に交通事故のリスクが潜んでいます。
自賠責保険でも事故のリスクを一部カバーできますが、配達中の事故による怪我の治療費用などは補償の対象外です。
そのため多くのフードデリバリーサービスでは、自賠責保険に加えて任意保険への加入が推奨されています。
また出前館の場合は、自転車以外の車両で配達する場合に任意保険の加入が必須です。
自賠責保険と任意保険の違い
自賠責保険(強制保険)と任意保険の違いは、加入義務の有無と適用範囲の違いにあります。
詳しく見ていきましょう。
自賠責保険
「自賠責保険(共済)は、交通事故による被害者を救済するため、加害者が負うべき経済的な負担を補てんすることにより、基本的な対人賠償を確保することを目的としており、原動機付自転車(原付)を含むすべての自動車に加入が義務付けられています。」
出典:国土交通省「自賠責保険ポータルサイト」
自賠責保険(共済)は原付やバイク、電動キックボードなど、すべての自動車に加入が義務付けられており、未加入の状態は違法となる点に注意しましょう。
自賠責保険の補償対象は、自動車の運行中に他人を死傷させた場合(人身事故)による損害です。物損事故による損害や運転者自身が負った怪我の治療費などは補償の対象となりません。
自賠責保険は全国各地の保険会社や代理店にて加入でき、補償内容や保険料は基本的に全国共通です。
つまり配達中の事故によって自分自身が負傷したとしても、自賠責保険では治療費や入院費が給付されず、自費で賄うことになります。
自分自身の負傷のリスクに備えるためには、後述する任意保険を検討する必要があります。
任意保険
任意保険は自賠責保険で対象外となっている範囲をカバーするための保険です。
個人が必要に応じて追加で加入する保険であり、未加入の状態でも違法にはなりません。ただし出前館でバイク等を使ったデリバリー業務をする場合には、加入が必須です。
任意保険は全国各地の保険会社や代理店にて加入でき、補償内容や保険料は保険会社によって異なります。
なお自転車については、自賠責保険および任意保険の加入は法的義務となっていません。ただし加入を義務づける条例を制定する地方自治体も増えつつあります。
出典:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
自転車でフードデリバリー業務をする場合には、配達区域となる地方自治体の最新条例を確認すると安心です。
任意保険の種類
任意保険は、以下の2種類に分かれています。
- 業務中に適用される保険
- 業務外で適用される保険
基本的に加入必須とされているわけではありませんが、入っておけばもしものときに備えられるため安心でしょう。
ただし、先述のように出前館の配達時に原原付やバイク、軽自動車を使用する場合、どちらか一つへの加入が必須です。
それぞれの特徴を解説していきます。
業務中に適用される保険
業務を遂行している最中に発生した事故に対して適用される保険です。
たとえばデリバリーを受託後、自宅から店舗に向かい商品をピックアップし、配達が完了するまでに発生した事故に対して適用されます。
リモートワークなどの影響で需要が急増し、手軽に始められる点も魅力のフードデリバリーの仕事ですが、事故を起こした場合には、得られる報酬以上の代償を払うことになる可能性があります。
そのようなリスクも十分に考慮のうえ、まずは業務中に適用される保険に加入するのが現実的におすすめです。
業務外で適用される保険
業務以外の移動や日常生活で発生した事故に対して適用される保険です。
たとえば、デリバリーの待機中や配達先から自宅への帰り道において発生した事故などに対して適用されます。
仕事中に加えプライベートでも運転をよくする方は、前述の業務中に適用される保険に加え、業務外で適用される保険にも加入しておくと安心です。
フードデリバリー配達員の任意保険の選び方
ここではフードデリバリー配達員向けの任意保険の選び方を解説します。
確認すべきポイントは大きく3点です。
- 業務中に適用されるかどうか
- 高額な賠償に対応できるかどうか
- 怪我をした際の補償内容
一つずつ見ていきましょう。
業務中に適用されるかどうか
第1に、業務中に適用される保険を選びましょう。
先述の通り任意保険には大きく2種類あり、保険の種類によっては、配達中に事故が起きたとしても必要な補償を受けられないためです。
とくに自転車向け任意保険は業務中の事故が適用範囲に含まれていない場合が多いため、適用範囲をしっかり確認することをおすすめします。
また、「仕事の待機中や帰宅時の事故も保険でカバーしておきたい」「金銭的に余裕がある」なら、業務外で適用される保険もあわせて入っておくと良いでしょう。
高額な賠償に対応できるかどうか
第2に、高額な賠償リスクにも対応できる保険を選びましょう。
配達時には自損事故だけでなく人身事故が発生するリスクもあるためです。
過去の損害訴訟の判例では、自転車による死亡事故で数千万円の賠償責任が発生したケースもあります。
補償額の目安としては、対人賠償額1億円・対物賠償額1,000万円を最低ラインと考えておきましょう。
怪我をした際の補償内容
第3に、業務中に怪我をした際の補償内容を確認しましょう。
たとえば入院時の補償、手術費用、後遺障害の補償、死亡の補償など、怪我の補償内容と補償範囲は保険商品によってさまざまです。
一般的に補償内容が充実すればするほど、支払う保険料も上がります。
補償内容と保険料のバランスを見ながら、自身が無理なく納得できる保険を選ぶことが大切です。
このほかに、出前館への配達員登録をできるだけ早く進めたいという方は、即日で保険証書の発行ができる保険を選びましょう。ネット型の保険代理店であればオンラインで即日加入できる商品も多数あります。
なお、出前館で配達員をする際のおすすめ任意保険については、以下の記事で詳しく解説しています。
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出前館の自転車配達員は任意保険加入が必須?おすすめの選び方を解説
フードデリバリー配達員の任意保険の加入方法
フードデリバリーの配達員向けの任意保険は、保険代理店を介して加入できます。
ネット型代理店の場合には、オンラインで加入手続きを完結させることも可能です。
一般的な保険の加入時と同様に、まずは保険代理店のWebサイトで必要事項を確認しましょう。
少なくとも以下の3項目については契約前に確認することをおすすめします。
- 補償の内容(例:入院時の補償上限)
- 補償の範囲(例:業務中か、業務外か)
- 保険金を受け取れない場合の細則
複数の保険商品を比較検討したうえで契約をするとより安心です。
出前館の任意保険手続き
出前館では、配達業務に原付バイク、バイクまたは軽自動車を利用する場合に「任意保険証書」の提出が求められます。
任意保険証書(保険証書・自動車保険証券・保険証券)とは、任意保険加入時に保険会社から交付される証明書類です。
任意保険証書は書面または電子データで交付され、被保険者名、契約車両、保険期間、補償内容などの契約内容が記載されています。
出前館では、ウェブサイト上での本登録時に任意保険証の提出が必須です。
保険証書が書面で交付された場合には書類を写真に撮ってアップロードし、電子データで交付された場合にはスクリーンショット画面をアップロードしましょう。
審査をスムーズに進めるためにも、被保険者名、保険期間、補償内容などがはっきりと確認できる画像を提出するのがポイントです。
フードデリバリー従事者にも適用!一人親方労災保険加入制度とは
一人親方労災保険特別加入制度とは、個人事業主である「一人親方」が特定の条件を満たす場合に労災保険に加入できる制度です。
労災保険とは、従業員などの「労働者」を保護するための公的制度を指します。一人親方は自らが事業主であるため、原則として労災保険の対象にはなりません。
しかしながら、特定の条件を満たす場合、一人親方や個人事業主であっても労災保険への加入が認められています。
雇用されていないフードデリバリー従事者は、一人親方労災保険の加入対象者です。労働災害から身を守り、安全に業務をするための選択肢として、ぜひ覚えておきましょう。
詳しい加入条件については、以下の資料の3ページ目を確認してみてください。
参照:厚生労働省 都道府県労働局 労働基準監督署「労災保険 特別加入制度のしおり」
フードデリバリーの配達業務をするなら任意保険に加入しよう
フードデリバリー業務には交通事故のリスクが伴います。
配達中の怪我など、自賠責保険(強制保険)では補償されない部分は、任意保険への加入でカバーしましょう。
出前館で原付やバイクを使って配達する場合には、本登録時に任意保険証書の提出が求められます。保険料と補償内容のバランスを見ながら、最適な任意保険を選びましょう。
また雇用されていないフードデリバリー従事者は労災保険への加入が特別に認められています。万が一のリスクに備え、任意保険と併せて労災保険への加入も検討するのがおすすめです。
監修者からメッセージ
一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ
一人親方に安心安全を提供したい
静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。
厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。
一人親方労災保険組合の労災保険特別加入手続き対象地域
北海道 | 北海道、青森 |
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東北 | 宮城、岩手、秋田、山形、福島 |
関東 | 東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、茨城、栃木、静岡、山梨 |
中部 | 長野、新潟、富山、岐阜、愛知 |
北陸 | 石川、福井 |
関西 | 大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重、鳥取、岡山 |
中国 | 広島、山口、島根 |
四国 | 愛媛、徳島、香川、高知 |
九州 | 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島 |
沖縄 | 沖縄 |