第三者行為災害届とは?概要や記載内容をわかりやすく解説!

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公開日 / 2024.7.02

通勤中や業務中に、第三者の行為が原因で被害を被った際は「第三者行為災害届」を作成する必要があることをご存知でしょうか。

第三者行為災害届を提出しないと、労災保険の給付を受けられなくなる可能性があります。それだけに、第三者行為災害届けにまつわる正しい知識を持つことが大切です。

そこで今回は、第三者行為災害届の概要や書き方などを詳しく解説します。併せて、第三者行為災害が起きた際によく聞かれる「求償」と「控除」の違いについても説明しているので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも「第三者行為災害」とは?

労災保険が給付される原因となった災害が第三者によるものの場合、その災害を「第三者行為災害」と呼びます。つまり、第三者行為災害には、加害者が存在するのです。

第三者行為災害の具体例としては、主に以下のものが挙げられます。

  • 交通事故にあった場合
  • 他人から暴行された場合 
  • 動物が原因で負傷した場合

ただし、上記のケースに該当するからといって、かならずしも第三者行為災害に該当するとは限りません。第三者行為災害はあくまでも、業務に起因し、意図せずに起こった災害を指すからです

具体的には、従業員同士の殴り合いの喧嘩(けんか)などが挙げられます。このような場合、業務から逸脱していると判断され、そもそも労災保険の給付対象にならない可能性があるからです。

第三者行為災害届の記載内容

第三者行為災害届の記載内容は、全部で18項目あります。各項目の詳細は、以下のとおりです。

  1. 第一当事者(被災者)
  2. 第一当事者(被災者)の所属事業場
    (特別加入者の場合は所属する労災保険特別加入団体を記入します)
  3. 災害発生日
  4. 第二当事者(相手方)
  5. 災害調査を行った警察署又は派出所の名称
  6. 災害発生の事実の現認者
  7. あなたの運転していた車両
  8. 事故現場の状況
  9. 事故当時の行為、心身の状況及び車両の状況
  10. 第二当事者(相手方)の自賠責保険(共済)及び任意の対人賠償保険(共済)に関すること
  11. 運行供用者が第二当事者(相手方)以外の場合の運行供用者
  12. あなた(被災者)の人身傷害補償保険に関すること
  13. 災害発生状況
  14. 現場見取図
  15. 過失割合
  16. 示談について
  17. 身体損傷及び診療機関
  18. 損害賠償金の受領

※7~12は交通事故の場合のみ必須。

出典:厚生労働省「第三者行為災害のしおり

第三者行為災害届を作成したら、所轄の労働基準監督署へ提出します。

第三者行為災害届以外の提出書類

第三者行為災害があった際は、上述の「第三者行為災害届」以外にも提出が必要な書類があります。

①第三者行為災害届に添付する書類

「第三者行為災害届」を提出する際は、一緒に下記の添付書類が必要です

第三者行為災害届に添付する書類

出典:厚生労働省「第三者行為災害のしおり

なお、念書交通事故発生届の記入例は、上述の「第三者行為災害のしおり」の18ページ〜19ページより確認できます。

②第三者行為災害報告書(加害者)

災害を発生させてしまった加害者は、労働基準監督署から「第三者行為災害報告書」の提出が求められます。

第三者行為災害報告書は、主に以下の内容を確認するのに必要な書類です。

  • 第三者に関する情報
  • 災害発生状況
  • 損害賠償金の支払状況 など

第三者行為災害報告書の記入例は「第三者行為災害のしおり」の16ページ〜17ページより確認できます。

第三者行為災害における求償と控除の違いとは?

ここからは、第三者行為災害が起きた際によく聞かれる「求償」と「控除」について、それぞれの意味を詳しく説明していきます。

①求償の詳細

原則として、被害者に対する責任は、加害者である第三者が負わなくてはなりません。そこで被災者が第三者(加害者)に対して持っている「損害賠償請求権」を政府が取得し、この権利を第三者に直接行使することを求償といいます

そして、政府は行使した損害賠償請求権をもとに、被災者に対して労災保険の給付をおこないます。したがって、政府は被災者に対して給付した分の金額を、第三者(加害者)へ請求します。これが「求償」の仕組みです。

②控除の詳細

まず前提として、控除は以下のケースに該当する場合におこなわれます。

控除がおこなわれるケース:第三者(加害者)の損害賠償(自賠責保険や損害保険など)が、労災保険給付より先におこなわれていた場合

上記のケースに該当する場合、政府はその価格の限度に応じて、労災保険給付の額が控除(調整、減額)されます。これが「控除」の仕組みです。

控除の仕組みがあることで、被災者が実際の損害額より多くの支払いを受けることを防げます。控除の仕組みがないと、以下のように損害が二重にてん補されてしまうからです。

  • 第三者(加害者)からの損害補償
  • 国からの労災保険給付

ただし、労災保険の特別支給金や、そもそも労災保険給付の対象にならないものに関しては、控除の対象外です。

正しい知識を持って第三者行為災害届を作成しよう

これまでお伝えしてきたとおり、通勤中や業務中に第三者の行為が原因で被害を被った際は「第三者行為災害届」を作成する必要があります。

第三者行為災害届を提出しないと、労災保険の給付が差し止められる可能性があるので、注意が必要です

第三者行為災害届を提出する際は、添付の書類も求められます。第三者行為災害届の提出をスムーズに終わらせるために、必要な書類は早い段階から準備を進めておきましょう。

監修者からメッセージ

一人親方労災保険組合顧問 覺正 寛治

一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ

一人親方に安心安全を提供したい

静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。

厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。

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