造園業の一人親方の労災保険の補償範囲は? 仕事内容や労災事例も解説

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公開日 / 2024.7.02

造園業の一人親方として活動しているものの、労災保険に加入すべきなのかわからずに悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

結論からお伝えすると、造園業の一人親方は労災保険への加入をおすすめします。労災保険に未加入の場合、さまざまなリスクがあり危険です

ただし、造園工事において、業務内容によっては林業に分類される可能性があります。自身の仕事は建築業で請け負っているのか、または林業で請け負っているのかを元請けに確認し、業種に合った特別加入団体に加入しましょう。必要であれば労働基準監督署に問い合わせてみましょう。

そこで今回は、造園業の一人親方が労災保険に入っていない場合の具体的なリスクや、実際にあった災害事例などを解説します。併せて、一人親方労災保険の補償内容や加入方法も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも一人親方とは?

労働者を使用することなく、個人で仕事を請け負う働き方の人のことを「一人親方」といいます。そのため、一人親方も広い意味においては、個人事業主の一種です。

ただ、一人親方と個人事業主の大きな違いは、労災保険へ加入できるかどうかです。個人事業主は労災保険に加入できませんが、一人親方は労災保険に特別加入できます

一般的に、危険の多い仕事をしている個人事業主が一人親方とみなされ、そのリスクゆえに労災保険への特別加入ができるようになっているのです。リスクを抑えるためにも、一人親方として働くなら必ず労災保険に加入しましょう。

造園工事の労災保険の補償範囲について

「樹木の剪定のみ」「除草のみ」等の工事が付随しないお仕事は建設業に該当せず、事故が発生しても補償対象外となる可能性があります。


そのため、加入する際には元請けや特別加入団体もしくは労働基準監督署に問い合わせをし、自身のお仕事内容が建設業の一人親方労災保険特別加入に適しているかを確認することをおすすめします

造園業を営む一人親方の仕事内容

造園業を営む一人親方の仕事内容として、以下のものが挙げられます。

※以下のいずれの仕事内容も、建設業としての請負ではない場合や、工事を伴わない場合は、労災保険の補償対象外となる可能性が高いです

  1. 植栽業務
  2. 剪定業務
  3. 造園業務
  4. 営業業務
  5. 事務作業

各業務内容について、順に解説します。

①植栽業務

植栽(しょくさい)は、植木や花などの植え付けをする業務です

また、植木や花などの植え付け以外には、周りに土を入れる「泥入れ」の作業がおこなわれることもあります。

②剪定業務

剪定(せんてい)は、植木の手入れをおこなう業務です

植木の手入れをおこなう際は、刈込鋏(かりこみばさみ)やチェーンソーなどを使用します。木花の成長を促しながらも、景観を整える必要もあるため、デザイン性も問われるのが特徴的です。

③造園業務

造園業は、個人邸宅や料亭、ホテルなどの庭を作る業務です

造園の設計や造園工事全体の指揮監督をおこなう際は、植木や草花の知識のみならず、石材などの資材に関する知識も求められます。

④営業業務

先述のように、一人親方は個人事業主の一種であるため、クライアント(顧客)の獲得は自らおこなわなくてはなりません

造園業の一人親方がおこなうべき具体的な営業方法としては、以下のものが挙げられます。

  • 会社員時代の人脈や知り合いを頼りにして仕事を獲得する
  • 気になる企業に問い合わせ、もしくは飛び込み営業する

案件を受注できないという最悪の事態を避けるためにも、人脈形成を積極的におこなうことが大切です。

⑤事務作業

事務作業も、造園業を営む一人親方が自らおこなわなくてはなりません

個人事業主は会社員と違い、年末調整の対象ではないので、自身で確定申告をする必要があります。確定申告をおこなう義務があるのにも関わらず申告を怠ると、別途税金が課せられるなど、多くのデメリットが生じます。そのため、確定申告は期日までに必ず手続きをしましょう。

なお、一人親方の確定申告に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

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一人親方は確定申告が必要? 申告時の手順やポイントなども紹介!

造園業を営む一人親方の年収はどの程度

造園業を営む一人親方の平均年収は、一般的に600〜800万程度といわれています

これに対して、造園業の正社員の平均年収は、400万円程度と言われています。そのため、単純に収入面だけを比較すると、一人親方として独立した方が稼ぎやすいということがわかります。

造園業の一人親方として自身のスキルや技術に磨きをかければ、年収1,000万円も決して不可能な数字ではないでしょう。

造園業を営む一人親方におすすめの資格

自身の知識やスキルを証明する資格を持っていると、造園業の一人親方として仕事を獲得する際に大きく役立つことは間違いありません。そこでここからは、造園業を営む一人親方におすすめの資格として、以下3つの資格を紹介します。

①造園技能士

造園技能士は、庭に関する知識と技能があることを証明する国家資格です。

造園技能士の検定試験には1級〜3級に分かれており、それぞれ学科試験と実技試験を通過する必要があります

参考:一般社団法人 日本造園組合連合会「造園技能士

②造園施工管理技士

造園施工管理技士も前述の造園技能士と同様、国家資格です。

造園施工管理技能士の試験は、1級と2級に分かれています。1級と2級のそれぞれで、受験資格が設定されているため、受ける際は受験資格を満たしているのかチェックしましょう

参考:一般社団法人 全国建設研修センター「技能検定

③登録造園基幹技能者

登録造園基幹技能者は国家資格ではありませんが、造園技能者としての知識はもちろんのこと、現場をまとめるマネジメント力を証明できる資格です

ただし、登録造園基幹技能者を受験するには上述の1級造園技能士もしくは、1級造園施工管理技士を所有していなければなりません。また、造園工事の実務経験10年以上・職長経験3年以上を満たしている必要もあります。

参考:一般社団法人 日本造園建設業協会「新しい技能者像(登録造園基幹技能者)

造園業の一人親方として働くメリット

造園業の一人親方として働くメリット

会社に属していると多くの恩恵を受けられますが、独立して一人親方として活動することにもさまざまなメリットがあります。

3つのメリットについて、順に解説します。

①仕事を自由に選択できる

一人親方として働くと、仕事を自由に選べます。

会社員の場合、立場にもよりますが、裁量権は一人親方のような個人事業主と比べると、限られると言えるでしょう。「やりたくないから」という理由で、仕事を断るのは現実的ではありません。

その点、一人親方であれば、仕事を自由に選択できます。自ら営業をかけ仕事を探す必要は生じますが、自分の望む仕事をおこなえるのは非常に価値のあることです

②年齢関係なく働ける

一人親方の場合、心身ともに健康であれば、高齢になっても働き続けられます。

反対に会社員の場合、定年退職制度を設けている企業が多くを占めるため、定められた年齢に達すると、そのまま退職しないといけません。

年齢を気にすることなく、自分が望む限り仕事を続けられるのは、一人親方の大きなメリットの一つです

③さらなる収入アップを期待できる

会社勤めの場合、自分が成果を上げたとしても、そのすべてが給料に反映される訳ではありません。

もちろん、仕事を獲得できない、報酬額があまり高くない案件しか受注できない、などという例外はありますが、一人親方のような個人事業主は成果のすべてが報酬という形でダイレクトに反映されますので、一人親方として独立すればさらなる収入アップが期待できるでしょう

自分の腕に確かな自信があるのなら、一人親方に挑戦する価値は大いにあるでしょう。

造園業の一人親方として働くデメリット

造園業の一人親方として働くデメリット

これまで造園業の一人親方として働くメリットを紹介しましたが、当然デメリットもあります。

デメリットをカバーする方法も紹介しているので、独立を検討している方はもちろん、すでに一人親方として活動している方も、ぜひ参考にしてください。

①天候によって仕事ができなくなる恐れがある

造園業の一人親方は外での作業が基本であるため、天候に左右されます。多少の雨なら作業できることもありますが、台風や大雪の場合、そうはいきません。

仕事ができない期間が続くと、収入にも響いてしまいます。そのため、日頃の資金管理や、本業以外の収入源を持つことなどが大切です。

②事務作業を自分でおこなう必要がある

一人親方は、確定申告をおこなう必要があります。日々の経費処理や毎月の請求書発行などといった事務作業のすべてを、自分でこなさなくてはなりません

とくに、簿記の学習経験がない方にとっては、慣れない作業のため大きな負担となりえます。そのため、独立前に簿記の勉強をしておくと良いでしょう。資金に余裕があるのであれば、税理士に依頼するのも効果的です。

③怪我や病気にかかると収入が途絶える

一人親方が怪我や病気にかかり働けなくなると、収入が途絶えてしまいます。会社員であれば労災保険の適用により休業補償を受けられますが、個人事業主は受けられません

ただし、一人親方に関しては例外です。厚生労働省によると、一人親方として一部の業種に従事している人は、特別に労災保険に加入できると定義されています。

なお、一人親方が労災保険に特別加入した際に受けられる補償内容は、以下の記事で詳しく解説しているので、そちらを参考にしてください。

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一人親方労災保険の補償内容とは?給付基礎日額ごとの給付例も紹介

造園業一人親方の労災事例

造園業の一人親方は、怪我のリスクが大きい仕事です。実際、過去には以下の災害事例がありました。

造園業一人親方の労災事例

万が一、労災保険に未加入の場合、入院費診察代は自分で負担しなくてはなりません。さらに怪我が重症で、休業せざるを得なくなった場合は、収入がなくなってしまいます。

そのため、労災保険にまだ入っておらず建築業として造園工事を請け負われている方は、速やかに入会の手続きをおこなうことをおすすめいたします。労災保険に特別加入すると、治療費の援助や休業補償など、手厚いサポートを受けることが可能です

なお、一人親方労災保険に特別加入する方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

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一人親方労災保険の加入方法とは?申込方法から費用まで解説!

造園業の一人親方なら労災保険に特別加入しよう

造園業の一人親方として活動しているなら、造園工事の補償範囲を必ず確認の上、労災保険に特別加入することをおすすめします。一人親方には多くのメリットがある一方で、怪我や病気になった際に収入が途絶えるなどのリスクがあるのも事実です

働けなくなった際のリスクを軽減するためにも、労災保険への特別加入が大きな意味をもちます。治療費休業補償をはじめ、さまざまな援助を受けられるので、万が一のことがあっても安心です。

一人親方として働くなら、労災保険に忘れずに特別加入しましょう。

監修者からメッセージ

一人親方労災保険組合顧問 覺正 寛治

一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ

一人親方に安心安全を提供したい

静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。

厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。

一人親方労災保険組合の労災保険特別加入手続き対象地域

北海道北海道、青森
東北宮城、岩手、秋田、山形、福島
関東東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、茨城、栃木、静岡、山梨
中部長野、新潟、富山、岐阜、愛知
北陸石川、福井
関西大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重、鳥取、岡山
中国広島、山口、島根
四国愛媛、徳島、香川、高知
九州福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島
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