労災保険の休業補償の期間とは? 受給できる金額についても解説

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公開日 / 2024.7.02

労災保険の休業補償の期間が分からずに悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。いざというときに、安心して休業するためにも、労災保険の休業補償に関する正しい知識を持つことは大切です。

そこで今回は、労災保険の休業補償の期間について詳しく解説します。併せて、休業補償の際に受給できる具体的な金額についても紹介していくので、ぜひ最後までご覧ください。

労災保険の休業補償を受けられる期間とは?

厚生労働省が公開している内容によると、以下の要件を満たす限り、休業4日目から補償を受け続けることが可能です

  1. 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
  2. 労働が不可能な場合
  3. 賃金を受けていない場合

出典:厚生労働省「休業(補償)給付はいつまでもらえるのですか

労災保険の休業補償で受給できる金額

労災保険の休業補償は、休業1日につき、給付基礎日額の80%が支給されます。その内訳は、以下のとおりです。

  • 休業(補償)給付:60%
  • 休業特別支給金:20%

参考:厚生労働省「休業補償の計算方法を教えてください

ちなみに、給付基礎日額とは「労働基準法」の平均賃金に相当する額をいいます。平均賃金は、災害が発生した日または医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月に支払われた賃金総額(ボーナス等を除く)を、該当期間の暦日数で割った1日あたりの賃金額です。

実際に休業補償をどのくらい受給できるのか、具体的な数字を設定して見ていきましょう。今回は、月に25万円の賃金を受けていて、災害が4月に起きた場合を想定して解説します(賃金の締切日は、毎月の末日とする)。

まずは、給付基礎日額を求めます。給付基礎日額は以下の計算式より8,334円です(1円未満の端数が出た場合は、切り上げ)。

25万円×3ヶ月÷90(1月:31日、2月:28日、3月:31日)=8,333.33円

給付基礎日額を算出したら、それをもとに休業補償の額を求めていきます。

  • 休業(補償)給付:8,334円×0.6=5,000.4円
  • 休業特別支給金:8,334円×0.2=1,666.8円

ここでは、1円未満の端数が出た場合、切り下げるので、6,666円(5,000円+1,666円)が1日に支給される金額です。

労災保険の休業補償が打ち切りになる2つのパターン

ここからは、労災保険の休業補償が打ち切りになるケースについて解説します。具体的には、以下の2パターンです。

  1. 休業補償の要件を満たさなくなったとき
  2. 傷病補償年金に切り替わるとき

それぞれ順に説明していきます。

①休業補償の要件を満たさなくなったとき

病気や怪我が仕事をできる程度までに回復し、仕事に復帰した場合、労災保険の休業補償が打ち切りになります。前述した休業補償を受け取るための要件を、満たさなくなるからです。

  1. 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
  2. 労働が不可能な場合
  3. 賃金を受けていない場合

②傷病補償年金に切り替わるとき

療養を開始してから1年6ヶ月が経過し、以下の条件に当てはまる場合は「休業補償」から「傷病(補償)年金」に切り替わります

  1. 対象となる病気、もしくは怪我が治っていない
  2. 対象となる病気、もしくは怪我の具合が、傷病等級の第1級〜第3級に該当し、その状態が継続している

傷病等級第1級から第3級の詳細は、下表に示すとおりです。

傷病等級表

出典:厚生労働省「休業(補償)等給付・傷病(補償)等年金の請求手続

上記の傷病等級に該当せず、休業補償の要件を満たしている場合は「休業補償」が継続して支給されます。

労災保険の休業補償の期間に関してよくある質問

ここからは、労災保険の休業補償の期間に関してよくある質問への回答をおこないます。具体的には、以下の5つです。

  1. 骨折した場合でも休業補償の対象になるのか?
  2. 休業補償の受給中に退職しても補償は継続されるのか?
  3. 休日でも休業補償は受けられるのか?
  4. 休業補償期間中に出勤したら打ち切りになるのか?
  5. 一人親方団体を退会したあとも補償は継続されるのか?

各質問内容について、順に説明していきます。

①骨折した場合でも休業補償の対象になるのか?

骨折であっても、医師の指示のもと療養をおこなうため仕事ができない場合に、賃金が受け取れていない期間中は、休業補償を受けることが可能です

ただし、骨折が完治していなくても、仕事ができる状態にまで回復したら、休業補償の受け取りはストップします。仕事に復帰すると、休業補償を受け取るための要件を満たさなくなるからです。

②休業補償の受給中に退職しても補償は継続されるのか?

休業補償の受給中に退職しても補償は継続されます。「労働者災害補償保険法」の第12条の5には、「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」と明記されているからです。

ただし、退職後であっても、以下のような環境の変化があった際は、休業補償の受給が終了します。

  • 新しい会社に就職した
  • フリーランスとして収入を得るようになった など

上記に該当すると、賃金の受け取りが発生するからです。

出典:「労働者災害補償保険法(第12条の5)

③休日でも休業補償は受けられるのか?

土日など、会社が休みの日でも、休業補償を受けられます。ただし、休業補償を受け取るための3つの要件を満たしていることが前提です

  1. 業務上の事由又は通勤による負傷や疾病による療養のため
  2. 労働することができない
  3. 賃金をもらっていない

またアルバイトパートで、週の勤務日数が少ない人でも、上記の要件を満たしていれば、休業補償を受けられます。

④休業補償期間中に出勤したら打ち切りになるのか?

休業補償期間中に出勤しても、補償は継続されます。そのため、通院などで仕事を休まざるを得ないときでも、その日分の休業補償を受け取ることが可能です

半日だけ働いて、午後に通院のために早退したような場合は、以下の金額が休業補償として支給されます。

休業補償支給額=(給付基礎日額−働いた分の賃金)×60%

⑤一人親方団体を退会したあとも補償は継続されるのか?

一人親方の労災保険団体を退会したあとでも、補償を継続して受けることが可能です。前述した退職時と、同じ考え方になります。

ただし、労災が起きた時点で労災保険に加入していない場合は、休業補償を受けられません。そもそも、労災保険の対象にならないからです。

そのため、一人親方で労災保険に未加入の方は、労災保険に特別加入することをおすすめします。一人親方の労災保険の加入方法に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事

一人親方労災保険の加入方法とは?申込方法から費用まで解説!

⑥一人親方の場合の休業補償について

1.休業補償が受けられる期間について

  • 休業補償が受けられる期間について、業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養のため
  • 労働が不可能な場合
    ※会社員と異なり、一人親方は労働の日が定められていないため、より厳密な「全部労働不能」の状態が求められます。

全部労働不能とは

  • 入院中であること、または通院中で自宅就床もしくは医師指示による絶対安静等に準ずるものであること。
  • 機械・工具を使用しての現場作業が不能ということではない。
  • 商談・集金・請負契約・見積・材料仕入・労働者の指揮・監督等さえできない場合であること。

2.受給できる金額
労災保険特別加入時に選択いただく給付基礎日額を元に医師指示による休業4日目以降より以下の通り算定されます。休業1日につき、給付基礎日額の80%が支給されます。

その内訳は、以下のとおりです。
休業(補償)給付:60%
休業特別支給金:20%

3.休業補償が打ち切りになるパターン
①全部労働不能でなくなった(軽作業や見積もり等、仕事に関わる作業ができる身体状況になった)
②上述の傷病補償年金に切り替わるとき

労災保険の休業補償の期間について正しい知識を

今回は労災保険の休業補償について受給できる期間や、実際にもらえる金額などを解説しました。

休業補償の受給期間について、正しい知識を持つことで、いざというときでも安心できます。

また、通常は労災保険に加入できない個人事業主でも、一人親方など一部の業種は労災保険に特別加入することが可能です。未加入の方は、これを機に労災保険に加入することをおすすめします。

監修者からメッセージ

一人親方労災保険組合顧問 覺正 寛治

一人親方労災保険組合顧問覺正 寛治かくしょう かんじ

一人親方に安心安全を提供したい

静岡大学法経学科を修業後、1977年4月に労働省(現厚生労働省)入省。2002年に同省大臣官房地方課課長補佐(人事担当)、2004年に同省労働金庫業務室長を歴任し、2007年に同省鹿児島労働局長。退官後、公益財団法人国際人材育成機構の常務理事、中央労働金庫の審議役を経て、2017年4月に現職。

厚生労働省では「地下鉄サリン事件」「阪神淡路大震災」「単身赴任者の通勤災害」の労災認定や「過労死認定基準」の策定などを担当し、労災保険制度に明るい。一人親方労災保険組合顧問としては、一人親方が安心安全に働けるよう、これまで培った労災関係業務や安全衛生業務の経験を生かして労災保険特別加入制度の普及や災害防止活動に取り組んでいる。

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